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愛しき景色の果てで / À la fin du cher paysage

2021年10月30日(土)―11月21日(日)

アーティスト

 

キム・ヒョンソク

花沢忍

牧山雄平

ロバート・ボシシオ

ヨーガン・レール

キュレーター 三宅敦大

[ステイトメント]

現代では、グローバル化が進み様々な情報が世界規模で共有されることにより、かつては一つの国や、地域コミュニティ、あるいは家族や、個人のようにもっと小さな単位の中で議論されていた物事を、世界全体の問題として扱うことが可能になりました。こうした動向は、これまで見えていなかった問題を表面化させ、より良い世界を築くための一助となっているといえます。

しかし、同時に特定の問題がトレンド化し、議論の中心を席巻することで、これまでは反応できていた目の前の小さな問題に対し、鈍感になってしまっているようにも思います。

 

ヨーガン・レール(デザイナー)は、次のように述べます。

 

私は世界中のどこかで何か起こっているというようなことにわずらわされたくない。私の周りの非常に限られた場所で起こっていることにのみ注意を払っていたいのです。世界中のことに目を向けていたら、気が狂いそうな気がするのです。*1

*1 ヨーガン・レール (インタヴュー:松浦寿夫&田中恵子) 1986 「自然なマチエールの誘惑」『ユリイカ』18(3):120-125

 

私たちは、科学技術の発展や、様々な研究成果などの多量の情報を通して他者や世界の構造をかつてよりも知識として理解できるようになっています。ですが、この情報の増加はあまりに急激で、私たちの身体や精神のキャパシティーが増加しているとしても、情報の処理が間に合っていないのではないでしょうか。

 

本展は、一度広がりすぎた世界から離れ、自身の目の前の現実、自身のリアリティに向き合うことを促すため、キム・ヒョンソク | 花沢忍 | 牧山雄平 | ロバート・ボシシオ | ヨーガン・レールの5名の作家を紹介します。彼らは、それぞれが独自の仕方で現実に向き合い、真摯に世界を捉えています。彼らがどんな世界に生き、どのように現在を見つめているのか、その景色の果てを、作品を通して彼らと共に見つめてもらえたら幸いです。

 

 

[作家解説]

キム・ヒョンソク

1990年、木浦(韓国)生まれ。現在、横須賀を拠点に活動。徴兵の際に国境の向こう側にいる存在を殺すことができるという実感と、向こうに生きている人たちも同じ人であるという現実に衝撃を受ける。徴兵後に、写真を学びはじめるが、写真表現だけでなく、自身の手で描くことに惹かれ、東京芸術大学大学院 美術研究科油画専攻に進学。アートヒストリーや、絵画のアカデミックな枠組みに縛られることなく、キャンバスの概念から描くという行為に至るまで、自由に解釈し、表現することを続けている。彼はそういった評価軸や方法論を軽んじているわけではなが、それらは彼にとってリアリティが希薄である。誰もがそうであるように目の前には圧倒的な現実が横たわっている。彼はそのリアルを率直に捉え、欺瞞なく真摯に向き合うのだ。今回の展示では、修了制作から数点と、新作を展示。

 

花沢忍

1989年、神奈川県生まれ。2015年、多摩美術大学 油画中退。印象に残っている風景や映画、歌、大切な人との愛しい日々や、彼らの死など自身の中にあるさまざまな要素を絵画に反映させ、独自のユートピア的な世界を描き続けている。彼女の作品は、特定のテーマを描いているというよりも、彼女と自身の「現在」(あるいはそれを構成するこれまでに自身の培った全て)とキャンバスとの絶え間ない対話の表象であると言える。今回展示される《      》は、今年9月に行われた展示において《long, long season》という名で発表された作品である。彼女はここ数年この作品を描き続けており、9月以降にも加筆を続けた。佇みこちらを見つめる男女は微笑み、様々な動物や植物、天使や幽霊たちが8mに及ぶ画面の中に緩やかなリズムで共存している。

 

牧山雄平

1992年、京都府生まれ。2018年、東京藝術大学大学院美術研究科 絵画専攻壁画研究領域修了。現在、小豆島に在住。自身を取り巻く全ての事象、現象について、常に移りゆくそれらとどのように関係を築いてゆくのかを絵画を通して模索する。それはキャンバスを介した世界あるいは他者との対話であり、キャンバスそれ自体との対話でもある。作家は、「絵画というものをどのようにして成立させる、あるいは成立させきらないようにすることができるか」という。それは、牧山にとって絵画制作、あるいは絵画との対話が他者との関係やコミュニケーションのように終わりのあるものではなく、絶えず行われ続ける自身の生活の一部であるからだろう。

 

ヨーガン・レール

1944年生まれ、ドイツ人のデザイナー。1971年以降日本に在住し、2014年に亡くなるまで日本を拠点に活動した。今回は彼が手がけるブランド「ババグーリ」の一木造の椅子のシリーズにフォーカスする。これはインドネシアの職人が一つ一つ手彫りで独特な形を彫り出している。手彫り故に時間がかかるため、価格も決して安くはない。だが、一木造り故に耐久度は高く、これを長く使うことは、大量消費的な流れを減速することになる。彼はこうした手仕事の時間感覚を愛していた。それは、決して大きな力ではないかもしれないが、大海の一滴が、いつか大海そのものへとなるように、世界を少しずつ変えていくことができるだろう。

 

ロバート・ボシシオ

1963年、イタリア北部トローデナに生まれ。ウィーン美術アカデミー(The Academy of Fine Arts in Vienna)を卒業。現在はトローデナ(イタリア)、クルジュ= ナポカ(ルーマニア)、ベルリン(ドイツ)の3都市を拠点に制作活動を行う。彼の作品は具象的であるが、対象にピントがあっていないため、そこに対象があるのはわかるし、それがなんなのかも想像できるが、輪郭や全容は掴めず、自身のイマジネーションで補っていくしかないのである。それは目に見えるものの不確かさを提示するとともに、それでも目の前に存在するもの、自身が認識したもののリアリティを肯定しているように思われる。

 

 

 

会期

2021年10月30日(土)―11月21日(日)

​開場時間

13:00 - 20:00

​休場日

火、水、木

会場

The 5th Floor:東京都台東区池之端3−3−9 花園アレイ5階

アクセス

千代田線根津駅2番出口から徒歩4分

​入場料

¥500

​※学生無料

企画

​HB. (HB. Collective)

キュレーター

三宅敦大

共催

The 5th Floor

​助成

公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

​協力

​バンビナートギャラリー

​デザイン

​ROCA

​お問い合わせ

The 5th Floor: info@the5thfloor.org